訃報
高校時代から面識があり大学時代は試合会場で会えば言葉をかわす程度だった柔道関係の後輩。先に社会人となった私、1年後、偶然にも同じ会社の同じ支社へ入社してきた後輩。数年後、彼は自分の目指すものをもって退職していった。そしてまた数年後、バイク事故で死にかけた私のところへ
先輩〜。生きてますか〜。(笑)と笑顔でやってきた。
保険ちゃんとやってましたか?1回証券、見せて下さい。
決して見舞いを口実に寄ってくるようなヤツではない。
証券見せたら先輩、笑っていいですか?この保険最悪です。定年したら掛金がえらいことになりますよとこのバイク事故がきっかけで付き合いが深くなった。
その後は不定期であるがお互いに参った時や、毒を吐きたいときにどちらからともなく連絡が行き交う。
メシ行こうや。
先輩。肉行きませんか〜?
食後は彼の事務所で夜遅くまでお互いに毒を吐いた。こんな付き合いが20年ほど続いた。
2月ほど前、保険の更新葉書が届いたので電話してみたら
先輩最悪です。腹水溜まって原因不明で病院回りしてます。
という会話の数日後、緊急入院です(笑)と、メールが飛んできた。
このへんでちょっとゆっくり休めって神様が言ってるんやで。
というやりとりがあってGWに見舞いに行った。
もう終わりですわ。
あほ。死にそうな人間の顔色と違うわ。退院したら上手いもん食いに行こう。
わかりました。ちゃちゃっと治しますわ。
また来るわ。
という会話が彼との最後の会話となった。
朝から電話が鳴った。電話を掛けてくるほどの付き合いではない共通の友人。
朝のはよからすんません。が昨夜亡くなりました。と涙声。
そうなんですね。としか言えない。
ボーッとしたまま妻にはが亡くなった。と言って出勤した。
どうも頭の中で言葉の処理が遅れているようだ。朝一、事務処理を終わらせ誰も出勤していないひとときの時間、やっと頭の中の処理が追い付いた。
急に涙と鼻水が溢れ出す。それと同時に仕事の気持ちも薄れていくが、業務を終わらせた。
なぜか彼の顔を見たく彼の携帯電話を鳴らす。
電話の向こうで奥さんが気丈に
10時以降なら葬儀場に戻ってます。
わかりました。
と、10時過ぎに葬儀場に到着し彼と対面。棺桶が狭く肩を細めて、冗談をしているかのようにうっすらと笑みを浮かべているようにも見えた。だが、ほっぺは冷たかった。
今は柔道関係の後輩というものではなく、私にとって数少ない本当の友人。この年にして早くもひとり、友人を無くした。
これから凹んだ時、毒を吐きたい時はどこに吐けばいいのか?
45才あまりにも早過ぎる。
早過ぎるぞ。バカヤロー。そしてゆっくり休め。